どうも、広く浅いオタクの午巳あくたです。
今回は映画「IT イット それが見えたら終わり」シリーズについて語りたいと思います。
巨匠スティーブン・キングの名作ホラー小説を原作とする映画のあらすじと解説、そしてネタバレ考察をご紹介いたしますので、ぜひ最後までお付き合いください。
IT(イット)シリーズについて:「”それ”が見えたら終わり」と「THE END」の前後編
IT(イット)は、ホラー小説の巨匠であるスティーブン・キングの作品。本作はその実写映画ということになります。
実は1990年にテレビドラマシーズとして実写化されたことがあり、こちらも大ヒット。放送以降は「道化恐怖症」というピエロを恐れる人々が続出するなど、一風変わった社会現象を巻き起こしました。
そして2017年にまず第一作が公開され、2年後の2019年に続編が公開されました。
一作目は主要キャラたちが13歳の頃のお話で舞台設定は1980年代、そして2作目はそこから27年後の現代のお話となっており、大人に成長した主要キャラたちがメインとなって描かれます。
便宜上続編と称しましたが、単純な1と2というより、むしろ前後編と言うべき内容だったと思います。この二つ合わせてひとつの作品であると個人的には思いましたので、以降ではその体で語らせていただきます。
ネタバレ章以外でのネタバレはしないよう細心の注意を払いますので、未視聴の方も安心して御読みくださいませ。
あらすじ
大雨が降りしきるなか、13歳のビル・デンブロウは弟のジョージーに紙で船を作ってあげた。
嬉しくて外に飛び出し、雨で浅い川のようになっている道路に船を浮かべ、風に乗って水面を進むそれを追いかけるジョージー。
ところがその船は排水溝に落ちてしまう。
すると排水溝の中に、ピエロの姿をした不審な男がいて、ジョージーに話しかけてきた。
ペニーワイズと名乗る男を最初は怪しむジョージーだが、言葉巧みな彼に徐々に警戒心を解いていく。
船を返そうとするペニーワイズに手を差し伸べるジョージーだが、本性を現したIT(それ)は大口を開けて彼の腕を食いちぎってしまう。
地面に倒れながらも必死に逃げようとするジョージーだが、排水溝から伸びてくる手に捕まり…
1年後、行方不明になった弟を探し続けるビルだったが、当然ながら見つけられず両親からも呆れられていた。
そして吃音である彼は学校内でもイジメられていて、同じくいじめられっ子の集まりであるルーザーズたちと日々を凌いでいたのだった。
そして夏休みを迎えたビルは、弟が排水溝に落ちた仮説をもとに、仲間たちと共に弟が流れ着いた可能性のある川に赴いたのだが…
主要キャスト
それでは「IT」の主要キャラ、少年時代と27年後の両方のキャストをご紹介いたします。
ビルデン・ブロウ
少年時代:ジェイデン・リーバハー
13歳の中学生。吃音であることを理由にイジメられている。失踪した弟を探しだそうとしているが、両親からは呆れられていた。
キャストのビルデンは2014年に「ヴィンセントが教えてくれたこと」で映画デビューし、テレビドラマである「ジェイコブを守るため」でメインキャストも務めています。
ITの公開時は、リーバハーの性で活動していましたが、いま現在はマーテルという性で俳優活動をしているみたいです。
27年後:ジェームズ・マカヴォイ
人気小説家となっていて、結婚もしている。著作は概ね好評ではあるものの、結末がイマイチという評判があり、悩んでいる。
キャストのジェームズ・マカヴォイは、Xメンシリーズにおける若い頃のチャールズ・エグゼビアを演じていることで有名な方ですね。
ベン・ハンスコム
少年時代:ジェレミー・レイ・テイラー
転校生であり、まん丸とした体格ゆえにイジメを受けている。本や歴史が好きで、図書館に入り浸っていて、そしてデリーという街の歴史を調べていくうちに、その異常さに気づいた。
2013年に「42ー世界を変えた男ー」で映画デビュー。現在も本国で撮影中の映画に出演しているとのこと。
27年後:ジェイ・ライアン
かつてのまん丸とした面影はなくなり、建築業界で成功しているイケメン青年実業家に成長。
キャストのジェイ・ライアンの情報は見つかりませんでした。
リッチー・トージア役
少年時代:フィン・ウォルフハード
下ネタとジョークばかり口にする分厚いレンズの眼鏡をかけた少年。ストリートファイターにハマっていて、ゲーセンに通っている。
個人的に一番好きなキャラ。ホラー映画にはほどほどにシリアスを和ませてくれるコメディアンタイプが必要だと思っているので。
キャストのフィン君はネトフリオリジナル作品である「ストレンジャー・シングス」でブレイクし、ITで長編映画デビューを果たしました。音楽活動にも精力的で、「The Aubreys」というバンドでギターボーカルをしているそうです。
27年後:ビル・ヘイダー
コメディアンとして活動していて、大きなホールを満員にするほどの人気者。口の悪さは相変わらず。
演じたビル・ヘイダー本人もコメディアンだそうです。本作で映画俳優としてもキャリアを積み、現在はプロデューサーとしても活躍しています。
ベバリー・マーシュ
少女時代:ソフィア・リリス
ビッチの噂が立ち、他の女子からイジメを受けている。また13歳ながら喫煙し、メイクもかなり大人びていて、あからさまに浮いている少女。
キャストの・ソフィア・リリスは2013年に映画デビューし、本作をもってブレイク。以降も「ダンジョン&ドラゴンズ」や「グレーテル&ヘンゼル」などの人気作に出演している。
27年後:ジェシカ・チャステイン
夫とともにファッションブランドを設立するも、DV気質で支配的な夫に苦しめられている。
キャストのジェシカ・チャスティンはアカデミー賞に二度もノミネートされ、『タミー・フェイの瞳』で主演女優賞を獲得した実力派な女優さんです。
個人的には少女時代のべバリーの27年後の姿として、もっとも納得感がありましたね。
スタンリー・ユリス
少年時代:ワイアット・オレフ
ユダヤ系の少年で、バルミツバを控えている。臆病な性格。
キャストのワイヤレット君は、いまもべバリー役を演じたソフィアやビリー役のジェイデンと仲が良いそうです。
27年後:アンディー・ビーン
家庭を持って平凡な生活を送っている模様。
キャストの情報は特にありませんでした。
マイク・ハンロン
少年時代:チョーズン・ジェイコブス
火事で両親を亡くし、羊の屠殺場の見習いとして働いている。彼が火事を起こした張本人であるという噂がたち、イジメのターゲットにされている。
キャストのチョーンズ君はもともとはミュージシャン志望だったものの、演劇クラスに参加したのをきっかけに俳優としてのキャリアをスタートしたようです。
27年後:イザイア・ムスタファ
唯一、デリーの町に残ってITについての研究をしている。
キャストのイザイア・ムスタファの情報は見つかりませんでした。
エディ・カスプブラク
少年時代:ジャック・ディラン・グレイザー
喘息もち。支配的な母親のもとに育ち、病原菌に対しての恐怖心が強い。
キャストのジャックは、俳優としてのキャリアを積んでいるものの、映画製作にも興味があるらしく、将来は彼の監督した映画を目にする機会があるかもですね。
27年後: ジェームズ・ランソン
母親に似た女性と結婚し、あいかわらず神経質な模様。
ちなみに少年時代の彼の母親役を演じた女優さんと、奥さん役の女優さんは同一人物らしいですよ。
ペニーワイズ ー ビル・スカルスガルド
自らはペニーワイズと名乗るが、ビリーたちからはIT(それ)と呼ばれている。ピエロの姿をした怪物で、幻影を見せたり、相手の恐怖の対象に変化する能力を持っている。
あの不気味を体現したようなペニーワイズを演じたとは思えないほど、演者であるビル・スカルスガルドが正統派イケメンで驚きました。
それと劇中でペニーワイズが左右の目をそれぞれ別々の方向に動かすという不気味な表情を作っていたのですが、なんとCGやメイクではなく、ご本人のスキルでやっていたそうです。
感想
ただ怖いホラー映画ではなく、象徴的なモチーフや、裏設定を匂わせるシーンが満載で、非常に考察しがいがありました。
道化恐怖症の気があるため、観るのにだいぶ勇気が必要だったのですが、観て良かったです。考察厨の血が騒ぐ良作だったと思います。
ペニーワイズを演じたビル・スカルガルドの演技は圧巻。先ほど述べたような奇妙な目の動きや口の形、絶妙なタイミングで涎を垂らすなど、ホラー映画の怪物として細かなところまでこだわった文字通りの怪演っぷり。
こんなのと夜道で遭遇したら、発狂する自信が僕にはあります。
ちなみにエンドクレジット後に特典としてメイキング映像と演者のインタビューが流れるのですが、素の状態のビル・スカルガルドのビジュアルが意外過ぎて思わず一時停止してしまいました。
あんな正統派イケメンが、劇中ではめちゃくちゃ不気味で気持ち悪くなるなんて…※褒め言葉です
考察:観たけど意味が分からない人向け※ネタバレ注意
※この章では重大なネタバレを含みます。未視聴の方は飛ばしてください。
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「IT イット」は謎を残したまま完結するタイプの作品です。よって観たけど意味が分からない部分があったという方も少なくないでしょう。
そこで劇中の謎を僕が考察しうる限りで解説していきます。
そもそもITは何者なのか?
まずここでしょう。
続編の「THE END」では、ITは太古の昔から存在したとされる説明があります。
しかし一方で、ペニーワイズは近代に実在したことを示唆するシーンもありましたね。
べバリーがかつて自分が暮らしていたアパートの部屋を訪ねたところです。
今は老婆が暮らしている部屋にべバリーはお邪魔して、ふと老婆に家族のことを訪ねたシーンがありました。
老婆は父親がサーカスでピエロをしていたことを話しました。そして架けられた写真にメイクをしていないペニーワイズの姿があるのをべバリーが見つけます。
そして老婆は化け物に変身し、べバリーに襲い掛かるのでした。
ここでべバリーが目にした写真はなんだったのかが疑問です。アパートの中そのものが幻影だったので、あの写真自体は実在しないのでしょう。
つまり写真に映っていたペニーワイズも本当は存在せず、彼流のジョークだったのか?
僕はそうじゃないと思います。
そもそもあの一幕で、相手の恐怖の対象に化けるはずのペニーワイズが、なぜかべバリーの見覚えのない老婆の姿に変身していたのが不自然でした。
さらにその後にメイクをしていない素の状態のペニーワイズが現れたのです。劇中でピエロの格好をしていない姿をさらすのは、あのシーンが初めてでした。
おそらくですが、ペニーワイズは近代で実在していて、あの老婆も本当に実の娘を模したものなのではないかと思われます。
なぜあの件だけイレギュラーだったのかについては、これもおそらくですがあのアパートがかつてペニーワイズが生活していた場所だったのではないかと考察します。
しかしそうなると、太古の昔から存在したとされる伝承と矛盾しています。
さらに劇中では触れられてませんが、原作ではITは何十億年も前に宇宙からやってきたという記述があるとのこと。
何十億年というと恐竜すら存在せず、生命と呼べるものがいたかどうかも怪しい時代です。そういう時代にやってきたなら、たしかに「IT(それ)」と称するしかないでしょう。
ここである考察が成り立ちます。
ITとペニーワイズは元々は別個の存在であり、悪魔が憑依するかのようにペニーワイズとITが同一化したのではないか?
これであれば矛盾も解消します。
作中で主要キャラたちはずっと怪物のことを「IT」と称しています。しかしその怪物はわりと序盤から「ペニーワイズ」と名乗っていたのです。
なぜ呼称が二つもあるのか、ずっと不思議でした。そしてなぜ主要キャラたちにペニーワイズと呼ばせないのかも不思議でした。
もしかしたら、ITとペニーワイズが別物であるという作者からのヒントだったのではないかと思ったんですよね。
それなら太古の昔から存在していたはずのITが、ピエロの格好をしているのかも説明がつきます。
ITは恐怖の象徴だから、怖いものの代表各としてピエロの姿をさせたのでは?とも思いましたが、よく考えてみたら違います。
なぜならピエロ=怖いというイメージは、「IT」という作品から流布したものだからです。つまりスティーブン・キングが執筆していた当初は、ピエロが怖いというイメージはそれほど広まってなかったはずなのです。
だからピエロの姿は恐怖の象徴ではなく、ITが憑依したペニーワイズがピエロとして働いていたからではないかと思われます。
被害者の選定基準は?
ペニーワイズの被害者の選定基準も謎があります。
子供を好むのは事実でしょうが、THE ENDの冒頭では大人も襲っていました。
ここで考察できるのは、ペニーワイズの被害者の選定基準は「コミュニティから爪弾きにされている人間」なのではないかといこと。
被害者やターゲットを振り返ってみましょう。
まずルーザーズのメンツは、理由は様々ですが学校というコミュニティで迫害されています。
ルーザーズをイジメていたグループの一人であるパトリックは不良少年で、彼もまた別の意味で爪弾きものと言えるかもしれません。
THE ENDで襲われた女の子は顔に痣があるせいでイジメを受けているようでした。
ミラーハウスで殺された男の子は、遊園地に来たというのにたった一人で遊んでいました。普通は家族か友達と一緒に行くものですよね?
そしてさきほど触れた、大人なのに殺されたエイドリアンはゲイ・セクシャルです。やけに差別的な思想を持つ人間が多いデリーという町では、爪弾きにされていても不思議じゃありませんね。
デリーに住む大人たちの異常さ
ルーザーズたちの故郷である「デリー」という町ですが、そこで暮らす大人たちはかなり異常です。※ちなみに現実のアメリカには存在しない地名で架空の町です
冒頭でマイクに屠殺を指導していた保護者的な立場の黒人は、やけに過激な思想をマイクに押し付けていました。
ビルの父親は彼に冷淡な発言をしていて、またビルが薄暗い家の中で一人でいるカットもありました。もしかしたらですが、ややネグレクト気味だったのかもしれません。
ジャックの母親は息子に対して支配的でしたし、スタンリーの父親は逆に息子を見放しているような態度でした。
べバリーの父親は娘に性的虐待をしていたと思われ、いじめっ子のバワーズの父親は息子にモラハラめいた虐待をしていました。
またTHE ENDの冒頭に出てきた不良集団は、明らかに過剰な暴力性を見せていたのです。
登場する大人のほとんどが、過剰に暴力的だったり、冷淡だったり、逆に歪んだ関心を寄せたりしていました。つまり子供に寄り添うような大人たちが存在しないのです。
そして作中のいたるところに「Derry(デリー)」という町名が意味深に映されるカットがあり、またペニーワイズの象徴である赤い風船に「I LOVE DERRY」と書かれていたシーンもありました。
つまりデリーという町はITの悪意に汚染された町であり、長い時間それに侵された大人たちは内在する悪意を増長させてしまうのではないか?という仮説が成り立ちます。
だからペニーワイズはこの町を「愛している」のかもしれません。
もっと言うなら、ペニーワイズは悪意を増長させた住民を操ってこの町を支配している可能性すらあります。
原作ではペ二ーワイズの正体を警察から問われるシーンがあり、そのさい「この町だった」と言及している人物がいます。
そして劇中においても、ペニーワイズの支配を象徴するシーンがあります。
バワードたちにベンがお腹をナイフで切られているあの胸糞シーンです。
そのとき夫婦と思しき二人が乗った車が通りかかったのですが、夫婦は彼らをジッと見つめながそのまま行ってしまいました。
見て見ぬふりをするまでは百歩譲って理解できますが、表情一つ変えずに暴力を直視していた様相は、明らかに異様でした。そして走り去る車の後部の窓には赤い風船が覗いていたのです。
ヘンリー・バワーズだけには力を貸した理由
デリーの町の中において、特異な存在がいます。
それがルーザーズたちをイジメていたヘンリー・バワーズという少年。彼もまたペニーワイズの接触を受けた子供の一人ではありますが、他の子どもたちとは明らかに対応が違いました。
まずヘンリーを襲うことはせず、それどころか直接姿を見せていません。さらに彼にナイフを与え、自らの手で父親を殺させました。
続編においても、成長したヘンリーに再びナイフを与え、さらに病院から逃げる手助けまでしているのです。
なぜ彼だけが特別なのか?
それはおそらく前述したペニーワイズの支配に関係があると思います。
ヘンリーは父親の影響があってか、過度な暴力性を秘めた少年。イジメているときは、楽しんでやっている部分もありつつ、内在する怒りをぶつけているような印象が受けられます。
ただの悪ガキではなく、かなり歪んだ精神を持っているのが見て取れたのです。
ヘンリーはデリーという町に、ひいてはペニーワイズが支配するに相応しい「適正」を持っていたのではないでしょうか。
先ほどデリーに住む大人たちは、ペニーワイズに操られ支配されているかもしれないと述べました。
そしてペニーワイズがどのようにして人を支配してきたのかを、実演して見せる役割を担っているのがヘンリー・バワードという少年なのです。
デリーに住む大人たちは、もしかしたらヘンリーの父親自身も、かつてペニーワイズから「贈り物」を受け取った経験があるのかもしれません。
もしそうなら、子供を食べるだけでなく、操って育成するような真似をする理由とは?
それはデリーという町を農場とするためでしょう。
大人たちが子供の寄り添わない町であれば、子供は孤立しやすく、恐怖も育ちやすく、彼にとって格好の獲物が量産されることになるのです。
家畜を育てる農夫として、歪んだ大人を町に置いているのかもしれません。
そういえば、冒頭でマイクが羊を殺そうとするシーンがありました。
マイクの保護者は彼にこのように怒鳴ります
行きつく先はどっちかだ、俺たちのいる側か羊のいるあっち側か
実はこのシーンは、デリーという町が農場であり、羊となる子供たちと、その羊を育てる農夫がいることを示唆していたのかもしれませんね。
ペニーワイズが倒された理由
ペニーワイズが倒された理由も謎が残っている部分です。
THE ENDにおいては怪しげな儀式を用いても、彼を倒すことは叶いませんでした。
しかしそんなペニーワイズも、劇中で二度倒されています。
一度目は少年少女時代の彼らによってたかって殴られ刺され、最後は塵となりました。しかしこの時点では、あくまで冬眠に入っただけでした。
そして27年後、そのときもまた大人になった主人公たちに倒され、今度こそ滅びたのです。
この事実からペニーワイズを倒すには「恐怖を克服し、団結すること」が条件であると考察されています。
それは恐らく正しくて、僕も同じような意見を持ちました。
しかし同時にこうも思うのです。
なぜ一度目は冬眠させるだけにとどまり、二度目は完全に滅ぼせたのか?
それは両作品の対決シーンを見比べてみるとわかります。
まず子供時代において、彼らはペニーワイズに対して「殺せ!」と口々に言いながら攻撃していました。
大人になった彼らは、ペニーワイズに対して「お前はただのピエロだ」と口々に言っていただけで、ほとんど攻撃していません。
前者はペニーワイズに対して「殺意」を向けていて、後者は「お前は弱い存在だ」という認識を示していたのです。
ペニーワイズは恐怖を具現化した存在だと言われています。だから恐怖を克服すれば、子供にもボコられるほど弱くなるのでしょう。
ですが子供時代の彼らは恐怖を克服してはいても、ペニーワイズが弱者であるという認識は持っていませんでした。殺意を向けるということは対象を脅威と認めることでもあり、乗り越えはしても恐怖そのものが消えたわけではない証拠でもあります。
よって子供時代の彼らは、ペニーワイズを滅ぼすまでには至らなかったのです。
しかし大人になってからの彼らは気づきました。子供ばかり狙うのも、さらに子供が一人の時ばかり狙うのも、ペニーワイズが臆病な弱者の思考を持つが故であるということを。
だからこそ、彼らは攻撃もせず「お前は弱い」と言い続けたのです。
つまりペニーワイズを滅ぼす条件は、ペニーワイズを弱者として認識することだったのです。
これは「いじめられっ子の成長」を象徴しています。
イジメられているときは、イジメている方を圧倒的な強者として認識します。それこそ怪物同然の存在でしょう。
だから逆らえないし、ときには明確な殺意を覚えるものです。
ですが大人になったら、イジメている方は強者などではないことが理解できます。
彼らは弱い立場の人間を蔑むことでしか自分の力を示せないだけで、彼らは彼らなりの弱さを抱えた哀れな存在であると、なんとなくわかるようになります。
ましてや大人になったルーザーズたちは、みな社会的な成功を収めていて、強者の立場にいるのです。
だからこそペニーワイズという存在の矮小さに気づき、「大人の対応」ができたのです。
そしてペニーワイズは見る見るしぼんでいき、その心根を現した弱々しい姿になり、最後にこう言います。
すっかり大人になったな
正しく成長した彼らにとって、子供時代の怪物の恐怖など取るに足らないのだと示され、敗北を認めるのでした。
ところで、ペニーワイズは滅んだのでしょうが、果たして「IT」はどうなったんでしょうね?
僕の考察ではペニーワイズはITと同化した存在です。
もしもITはまだ生きていて、ソレを継承する存在がまた現れるかもしれません…
リッチーの秘密とは?
ペニーワイズはリッチーに秘密があることを知っていて、それを言及するシーンがありました。しかしながら最後までその秘密は明言されませんでしたね。
しかしラストにしっかりと答えはありました。
リッチーは道路に立っている木製の柵に文字を掘っていました。そこには「R+E」と彫られていました。
Rはリッチー、そしてEは戦いの中で死んだエディのことでしょう。
つまりリッチーはゲイセクシャルで、エディの事を愛していたのだと思われます。
リッチーがエディにだけはやけに悪態をついていたのも、もしかしたら好意の裏返しだったのかもしれないですね。
なぜルーザーズだけは殺されなかったのか?
最後になぜルーザーズたちはペニーレインに狙われながらも、殺されなかったのか?
ペニーレインは何度もルーザーズたちに接触しますが、殺すまでには至らず脅かすだけにとどまっていました。
他の子供は一瞬で食い殺していたのにも関わらずです。
主人公補正と言われればそれまでですが、世界的な作家であるスティーブン・キングがそんなご都合主義に頼るとも思えません。
おそらく、ルーザーズというコミュニティがあったからだと思います。
ペニー・レインはコミュニティから爪弾きにされている弱者を狙うと考察しましたが、ルーザーズたちは爪弾き者同士で団結し、友情を育んでいたのです。
つまり恐怖に打ち勝つための最大の武器こそ「友情」なのだということを伝えたかったのかもしれません。
まとめ:こんな人におすすめ
この映画はこんな人におすすめです。
・わりと人間ドラマが濃厚なホラーが好み
・グロ描写にはそこそこ耐性がある
・道化恐怖症ではない
ホラーというより人間ドラマとして面白かったです。
道化恐怖症の僕からすれば十分怖いのですが、たぶん普通の人からすればそこまで怖くないと思います。ただそこそこグロい描写はあるので、苦手な人はご注意ください。