どうも広く浅いオタクの午巳 あくたです!
こんかいはくずしろさん著作の「雨夜の月」という漫画について語りたいと思います。
ぜひ最後までお付き合いください!
あらすじ
『雨夜の月』、それは雨が降る夜は月が見えないように、あっても見えないものを象徴する言葉。
深夜の道端で耳の不自由な少女・及川奏音と出会った金田一咲希は、その美貌と怜悧な雰囲気に惹かれた。すると翌日、その美貌の少女が自分のクラスに転向してきて、驚きを隠せない沙希。
しかもさらに驚くべきことに、奏音は突発性難聴により耳が不自由なのだという。
そんな彼女に寄り添おうとする沙希だが、とうの奏音は「かまわないでくれ」と突っぱね、取り付く島もない。ほかのクラスメートもそんな彼女の態度に、反感を覚えていき・・・
キャラクター紹介:「雨夜の月」を抱える二人のヒロイン
ここでは本作のダブルヒロインである二人をご紹介します。
及川奏音
大人っぽい顔立ちで、落ち着いた雰囲気を持つ美しい少女。
音楽一家に生まれ、彼女自身もピアノの才能に恵まれたが、とつぜん耳が聞こえなくなったため音楽の道を断念することに。
また耳が聞こえなくなったことによる人間関係の変化に傷つき、心を閉ざしてしまっていた。
金田一咲希
明るく社交的で、家族にも友人にも恵まれたごくふつうの女子高生。
奏音に対しても同情だけでなく、できるかぎりの理解を示し、寄り添う姿勢をみせる心優しい少女でもある。
そして同時に、誰にも言えない秘密を抱えていて、ひどく悩んでいる。
感想:圧巻の人間描写
本作は、ただ可愛い子同士がキャッキャウフフとしているだけの「てえてえ」作品では終わりません。
タイトルの「雨夜の月」、難聴の少女である奏音にとっての雨夜の月は、「音」です。補聴器を使えば、音が存在することはわかる、しかしその実態がどんな形をしているのか、彼女には把握できないのです。
そんな歪んだ音に満ちた世界で生きることは、ときに人間関係さえも歪め、自分の内面すらも歪めてしまうことがありありとわかるのが、本作の優れたところ。
そしてそんな奏音に寄り添うのが、沙希という少女。親切を押し付けることをせず、まず奏音を理解して、しっかりと寄り添おうとする姿は好感しかありません。
いっぽうで咲希もまた奏音と違った「雨夜の月」があります。詳しくはネタバレになるので、控えましょう。
とにかく、二人の少女が抱える悩みや葛藤を、これでもかというくらいリアルに描かれているのが本作の魅力です。
作者「くずしろ」の描く”表情”の魔力
本作の著者である「くずしろ」先生について語っていきます。実は結構前から好きな作家さんだったんですよね。
個人的に「すごすぎるだろ・・・」って思うのは、5本の連載を同時に進行しているところ。「雨夜の月」のほかに4本もの作品を描いているのです。僕は漫画を描いたことはないので詳しくはわかりませんが、でもたぶん人間業じゃないと思うんですよね。
そしてもう一つ、くずしろさんのすごいところは「表情」を描くのが上手すぎるところ。
同じ笑顔でも、心からの笑顔、空虚な笑顔、苦笑い、含みをもたせた笑い、いたずらっぽい笑顔などなど、幾つものバリエーションを魅せてくれます。
仮にセリフがなかったとしても、キャラクターが何を思っているか、どんなことを言っているのかが、なんとなくわかるんじゃないかと思えるくらいです。
だからこそ彼女の著作の特徴として、「説明的なモノローグ」が少なく文章ではなく画で語らせるカットが非常に多いです。
本作を読む際には、ぜひともキャラクターの表情に注目してみてくださいね。
まとめ
別作品でアニメ化も決まり、注目度がどんどん高まっている作家であるくずしろ先生。「雨夜の月」は彼女の作家性を堪能するうえで、いちばん適していると個人的には思います。
彼女たちが抱える「雨夜の月」が果たして、どのような形で雲が晴れていくのか?
まだまだ始まったばかりの物語なので、今後どのような展開を迎えるのか非常に楽しみです!