どうも、広く浅いオタクの午巳あくたです。
今回は村上春樹さんの「ノルウェイの森」について語りたいと思います。
現代純文学作品を代表すると言っても過言ではない本作のあらすじや名言を徹底解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください!
「ノルウェイの森」のあらすじとテーマ
『ノルウェイの森』は、主人公・ワタナベトオルが過去を回想しながら、大学時代の出来事を綴る形で進行する物語です。
ワタナベは、親友キズキの死により大きな心の傷を負い、その影響を強く受けます。彼の生活は静かに進む一方で、彼は亡き親友の恋人・直子と再会し、彼女との複雑な関係が始まります。
そして物語のテーマの一つに「喪失」があります。
親友キズキの死という大きな喪失から物語は始まり、ワタナベは死というものを身近に感じながら、息苦しさを抱えながらも、懸命に人生を歩んでいきます。
その中で彼には出会いもあり、そして得るものもあります。しかし「喪失」を常に意識せざるを得ない彼は、どこかで持て余してしまっているのです。
よってこの物語は、終始にわたって物悲しい雰囲気が漂っています。
この「喪失」のテーマは、多くの読者に共感され、現代においても心に響くものがあります。
読んでみた感想
これほどまで深く重い「喪失」を描いた作品は他に知りません。
と言っても主人公が失ったのは親友であり、言い方は良くありませんが主人公が抱える背景としては平凡なものです。
しかし村上春樹の繊細なタッチで描かれる心象風景は、様々な色使いで「喪失」を表現し、この上なく深く重い景色として、読み手の心にイメージを植え付けます。
平凡なモチーフなのに、巨匠の手で描かれることで名画となっているようなイメージですかね。
例えば、親友のキズキは自殺という形で、ワタナベのもとから去ります。
病気や事故で亡くなったのなら、それはもちろん悲しいことですが、おそらくワタナベの心にここまで深い喪失感を残さなかっただろうと思います。
唐突に、前触れもなく、自らの意思で親友が死んだ。その事実はワタナベの人生を歪めるほど、強烈な喪失だったのです。
もしかしたら何かサインがあったんじゃないか?そもそも自分や恋人は彼の自死を思いとどまらせる楔になれなかったのか?
そんな一生答えが出ないであろう自問に、苛まれ、葛藤する心境が、美麗な文章で綴られていく様子は、「自殺」という形で失ったことの意味を粛々と訴えかけていました。
このような葛藤や乱れが、美しく精緻に描かれているため、このうえない「喪失」を実感できるのです。
名言とその意味:心に響く言葉たち
「ノルウェイの森」には数々の名言があり、ハッとさせられるセリフやモノローグがたくさんあります。以降で、僕が個人的に好きなものをいくつかご紹介いたします。
死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。
こうして一文だけ掲載すると、やや厨二感がありますねw
でもこの文章は本作を象徴するものであり、最も有名な一文でもあります。ワタナベの視点で物語を追っていれば、このセリフの重みがしっかりと理解できることと思います。
ここで暮らすしかないんだと思えば、それなりに暮らせる。そういうことだよ
諦めたら試合終了と言いますが、人生にはときにこういう諦めも大事だと思います。
環境への文句は言い出したらキリがなく、どこかで見切りをつけなければいつまでも不平不満を垂れ流すだけになってしまいますからね。
「私たちがもともな点は」「自分たちがまともじゃないってわかっていることよね」
心に問題を抱えている人が集まる施設で暮らすレイコというキャラクターが発するセリフ。
彼女自身も問題を抱えている身でありますが、それを自覚しているがゆえに出てきた言葉ですね。たしかに人間って、みんなみんなどこかしらまともじゃない部分があるもんです。
大事なのはウンコをかたづけるかかたづけないかのよ
すごいパワーワードですねwでもすごく好きなセリフなんです。寝たきりの父親の介護で下の世話もする緑が、同情するだけで何もしない親戚筋に怒りながら発したセリフです。
見舞いに来て同情するだけで何もせず、それである種の義務を果たした気になっている人間たちに対して、実際に介護に携わっている立場からの辛辣な苦言です。
登場人物:「ノルウェイの森」を深く理解するために
ここからは主要なキャラクターをご紹介。ちょっとした裏話なんかも解説しますね!
ワタナベ
主人公。20歳の大学生。物腰が柔らかく礼儀正しいが、どこか無気力で投げやりな生き方をしている少年。
親友を自殺で失ってから、言いようもない喪失感を抱え漫然と生きている。同時に再会した直子と絆を深め、自分の中で大きくなっていることに戸惑っている。
一説では、この主人公は村上春樹自身がモデルとなっているとされ、ノルウェイの森は作者自身の経験を色濃く反映しているのかもしれない。
直子
ワタナベの親友であるキズキの恋人、彼が自殺するときも恋人だった。
ワタナベ同様にひどい喪失感を抱えていて、それでいてワタナベよりも不器用な性格からか社会に適応できないでいる。
直子という女性は村上春樹の青春三部作の二つ目である「1973年のピンボール」にも登場しており、年代的に鑑みて同一人物でないかという説もある。
緑
ワタナベの同級生。ベリーショートのヘアスタイルをした活発な女性。
大胆で型破りなパーソナリティーで、ワタナベを困惑させることもしばしばある。女性に求められる貞操観念や奥ゆかしさのようなものを毛嫌いしている。
永沢
ワタナベの暮らす寮で寮長をしている先輩。
大学きっての優秀な生徒で、絵に描いたようなエリート。同時に傲慢で独善的な面があり、恋人がいてもかまうことなく女遊びにあけくれる。
キズキ
ワタナベの親友で、直子の恋人。高校3年生のころに自殺していて、作中では回想にのみ登場。
なぜ自殺したのかは、ワタナベにも直子にも心当たりがない。
まとめ:こんな人におすすめ
本作はこんな人におすすめです。
・美しい文体に惹かれる
・名言を発見すると興奮する
・読み終えた後にじっくりと考察するのが好き
村上春樹の作品の中でも一、二を争うくらいの知名度を誇る名作なので、初めての村上作品としても十分おすすめ。
ですが意外と好き嫌いが分かれるため、絶対に面白いですよとも言いにくいですね。ネットや本屋で数ページ試し読みしてから購入を決めることをお勧めします。