こんにちは、広く浅いオタクの午巳あくたです。
今回は、辻村深月さんの「かがみの孤城」について、あらすじや登場人物、感想を紹介していきます。
僕が読んで感じた感動や驚きを皆さんにも共有できればと思っているので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います
あらすじ:7人が迷い込む不思議な世界
主人公のこころは、学校に行けなくなり、部屋にこもる生活をしています。
ある日突然、鏡が光りはじめオオカミ様という狼の面を被った少女が現れ、「孤城」という不思議な世界に迷い込みます。
孤城の中には、こころを含む7人の中学生が集めらていました。彼ら彼女らは、孤城の中で隠された「鍵」を探すという謎のミッションに挑むことになり、鍵を見つけられたら願いが叶うというのです。
そんなこんなで、こころは見ず知らずの少年少女たちと長い時間を同じ空間で共に過ごすことに。そしてやがて気づくのです。それぞれが現実世界で何かしらの悩みや問題を抱えていて、なかなか学校に通えていない子たちであることを・・・
登場人物紹介:7人の少年少女
さて、ここからは登場人物たちについて紹介します。
安西こころ
主人公で、学校でのいじめが原因で登校拒否となってしまい、自室に引きこもって毎日を過ごしていた。
内向的ではあるものの、極端に暗いというわけではない、ごく平凡な少女。ちょっとした不運でイジメのターゲットになり、心を閉ざしてしまう。
アキ
クールで寡黙な少年。感情を表に出すことが少なく、孤城では冷静な態度を保つことが多い。
とりわけミステリアスな印象が強いものの、それは過去に負ったトラウマのせいで周囲と距離を取るようになったから。
スバル
明るく前向きな性格で、グループのムードメーカー的存在。
他のメンバーたちにも明るく接していて、雰囲気を和ませるのが得意。いっけんすると不登校とは無縁に思えるが、その性格ゆえのトラブルを抱えている。
フウカ
非常に大人しい性格で、他人との関わりを極力避けるタイプ。
彼女も学校に通えない理由があり、孤城に導かれた。
マサムネ
優秀で知的な少年ではあるが、それゆえに孤立しているタイプの少年。
常に冷静に状況を分析し、理性的に行動をするいっぽうで心の奥底には深い孤独感を抱えており、他人に弱みを見せることを恐れている。
リオン
明るく活発で、それでいてどこか大人びている少女。
女性陣の中ではもっとも明るく、コミュニケーション能力に長けている。だがその明るさの裏にはかなり根深い闇が潜んでいる。
解説:容赦のない物語
ガワはファンタジーではあるものの、内容は少年少女たちの「心の成長」を描いた物語です。
だからと言ってタイトルにもなっている「かがみの孤城」という舞台が無駄になっているわけでもありません。この舞台がやがて、とんでもなく大きな意味を持つことになります。
城に集う少年少女たちはみな不登校という状況下にあります。そしてなによりもその一人一人の状況が、あるいは心境が、とても複雑で一筋縄なはではいかないところがなんともリアル。この手の問題の根深さを容赦なく描いています。
彼ら彼女らの息苦しさ、あるいは生き苦しさは、どこまでもリアルで救いがたいものでした。読んでいるこちらの呼吸もしんどくなってくるほどに。
「孤城」という不思議な場所は、そんな現実から逃げたいと願う彼らのよりどころにもなっていきます。その場所で彼らは自分と向き合い、仲間たちと共有し、心を癒していくんです。
しかし、思春期の少年少女たちが集まって、和気あいあいのままずっといられるわけもありません。出会ってしまったがゆえ、関わってしまったが故の葛藤や苦しみで、また深く傷ついていくのです。
そんなあるいろいろな意味で「容赦のない」作品と言えるでしょう。
感想:圧巻かつ感動の結末
正直、この本を読んだあと、しばらく余韻から抜け出せませんでした。
それくらい感動的な結末が待っているんです。特に、クライマックスで様々な謎が明らかになる瞬間は、息が止まるほどの衝撃でした。
それは単純に感動したからだけではありません。驚くほど鮮やかな「構成」に心を奪われたからでもあります。
辻村作品の特徴として、「濃密なヒューマンドラマを描きつつも、上質なミステリーのように鮮やかな伏線を張っていく」というのがあるのですが、本作はそれを存分に振るった作品と言えますね。
クライマックスから、怒涛の勢いかつ鮮やかに回収されていく伏線の数々に、脳汁がドバドバでました。
まとめ
『かがみの孤城』は上下巻併せて800P超えのヘビーな作品ですが、そんなこと気にならないくらい「読ませる」作品です。
辻村深月さんの作家性をもっとも強烈に実感できる作品でもあると思いますので、辻村作品のデビューとしてもお勧めです。